リーテム東京工場|照明 | リーテム東京工場|照明 |

リーテム東京工場|照明 照明デザイン:近田玲子 Architecture/Lighting, 2005

これまでのリサイクル工場は、外から見えないように作られたが、この工場では、外からよく見える建築デザインが積極的に採り入れられた。
照明計画では、21世紀に重要な位置を占める「再生の場」を多くの人に知ってもらいたいと考え、建物だけでなく、処理を待つ廃棄物や機械類、集塵機などに鮮やかで透明な色の光をまとわせて、「宇宙ステーション」のような再生工場を実現させた。
モノトーンのメカニカルな機械類をポップなオブジェに変える光は、今では埋め立て地の無味乾燥な環境で働く人たちの夕方の楽しみのひとつになっている。(近田玲子)

所在地:東京都
面積:2,634 ㎡
竣工:2005.5
設計:坂牛卓
担当:中島壮
構造:金箱構造設計事務所
照明:近田玲子

近田玲子

日本照明学会専門会員、北米照明学会会員、国際照明デザイナー協会会員、国際ダークスカイ・アソシエーション会員、都市環境デザイン会議会員、東京芸術大学非常勤講師。

1946年埼玉県生まれ。1970年東京芸術大学美術学部卒。1986年株式会社近田玲子デザイン事務所を設立、現在に至る。

住宅から都市に至る幅広い分野で、多くの建築照明、環境照明を手がける。
建築照明に、東京芸術劇場改修、立教学院聖パウロ礼拝堂改修、東北大学青葉山東キャンパス・センタースクェア・ブックカフェ棟、九州国立博物館、ホテル三余庵、ミューザ川崎、聖路加国際病院。
都市環境照明に、金沢城公園、椿山荘庭園、西郷隆盛像・上野西郷会館、早稲田大学大隈記念講堂改修、品川インターシティ・品川セントラルガーデン、さいたま新都心夜間景観調整、2000年の九州・沖縄サミット首里城の景観照明など。

ディアナガーデン広尾、リーテム東京工場が2007年国際照明デザイナー協会 (IALD) 賞受賞。九州国立博物館、ハートアイランド新田一番街が2006年、2005年と2年連続で北アメリカ照明学会 (IESNA)優秀賞を受賞。東雲キャナルコート CODANで2005年通産省グットデザイン賞・金賞受賞。リーテム東京工場で2005年芦原義信賞、和泉シティプラザで2004年日本照明学会・照明デザイン賞受賞。

監修に『住まいのライティング』『照明事典』、共著に『あかりと照明の科学』『住まいのカルテット』『照明デザイン入門』『とんちんかん道具館』。

解説

この再生工場は、巨大な工場が建ち並ぶ、人気の少ない埋め立て地に建てられた。近くには空港があり、数十分おきに頭上に轟音をあげながら航空機が往来する。
ロケット発射台のような集塵機、ロボットのような大型パワーシャベルなど、重量感溢れる設備機械類は、光を浴びることにより、サイバーでエネルギッシュな感覚のオブジェに変わる。
照明は航空機の飛行の障害とならないよう、ライトダウン(下向きの光)を基本にしている。
機械、重機、そこで働く人、リサイクルされる物、その情景を誰でも外から覗くことが出来る。
建物正面は、パレット上の絵の具のように透明で鮮やかな色光で、見学者を迎える光のステージとした。
キャノピーには、色変化フィルターのついた150W メタルハライドランプを使い、筒型の明かり取りの屋上から床に差し込む月光をデザインした。20色が1サイクル75秒で変化する光の演出プログラムにより、より興味をそそる建物入口とした。
キャノピーの上に作られたオフィスへの入口は、ウォールウォッシャーにより簡素で清潔な印象を作った。

自然光が入る2階オフィスは、昼間は蛍光灯の活動的な明るさに溢れている。
暗くなると、窓に埋め込んだ色の光が点灯して天井や壁を柔らかく染める。
鮮やかな色光を作りだしているのは、カラーのチューブを被せた20Wのトラフ型の蛍光灯である。外がわの建物正面からはリズミカルな色窓として、内側からはステンドグラスのように見え、工場労働者たちの楽しみのひとつとなっている。
見学者用通路にもオフィスと同じく安価で効果的な光の演出をした。窓際の柱とガラスの間に取り付けた20Wのトラフ型蛍光灯の色光は、窓ガラスに映り込んで通路の照明として機能する。
陽が沈み「闇に浮かぶ宇宙ステーション」が現れる。舞台のように照らされた再生工場を見に多くの人々が訪れ、作業員たちも鼻が高い。

近田玲子